「みだれ髪・・・万葉集」
 作詞家、故星野哲郎氏と万葉集については、彼の作品の中に見ることができる。例えば「みだれ髪」である。三番の歌詞に
春は二重に巻いた帯、三重に巻いても余る秋とある。さて、万葉集の大伴家持の歌である。

一重(ひとへ)のみ (いも)(むす)びし (おび)をすら 三重(みえ)()ふべく ()()はなりぬ
一重耳 妹之将結 帯乎尚 三重可結 吾身者成(万葉仮名)(巻四 七四二)
大伴宿祢家持贈坂上大嬢郎女歌十五首(漢文、添書き)
 『一重に貴女が結んでくれていた帯も、三重に結ばなければならない程に、私の体はなってしまいました。』逢えない貴女を思うあまり痩せてしまいました。
 この歌は家持が「坂上大嬢(さかのうえのおおいらつめ)」に贈った十五首の中の一つである。「一重に巻いていた帯が三重に巻くぐらい痩せた。」と言っている。
 仮に家持のウエストが九十センチだったとすれば、三分の一の三十センチまで痩せたことになる。これはゲキヤセである。家持さんは病気で命がアブナイのではないか。と、思ってしまう。
 ところが、さすが星野哲郎先生である。家持の過剰な表現は取らず「みだれ髪」では「二重から三重」に痩せたである。つまり、「三分の一」から「三分の二」に変更である。
 しかし、「みだれ髪」主人公は女性であり、仮に六十センチのウエストから「三分の二」の四十センチに痩せるとかなり辛い。
「みだれ髪」 作詩:星野哲郎 作曲:船村徹
 髪のみだれに手をやれば 紅い蹴出しが風に舞う 憎や恋しや塩屋の岬 投げて届かぬ想いの糸が 胸にからんで涙をしぼる

 すてたお方のしあわせを 祈る女の性かなし 辛や重たやわが恋ながら 沖の瀬をゆ

底引き網の
 舟にのせたいこの片情け

 春は二重に巻いた帯 三重に巻いても余る秋 暗や涯てなや塩屋の岬 見えぬ心を照

らしておくれ
 ひとりぼっちにしないでおくれ

 作曲の船村徹先生が歌います。みだれ髪

(みだれ髪の詞について)
 投げて届かぬ想いの糸の「糸」とは「琴線(琴の弦)」のこと。以前、互いに好き合ってた人に、今一度、「想いの糸」を投げたが届かず、風に押し返され、己に絡んで胸を縛り、なおさら辛い。沖の瀬を行く底引き網の舟に乗せたいとは、「重い思い」を沖合いを行く「底引き舟」に乗せて、何処かへ運んでほしい。見えぬ心を照らしておくれとは、「わからない男の心」を「灯台の光」で照らし出して欲しい。これらの一節は、春は二重に巻いた帯、三重に巻いても余る秋と共に、星野哲郎先生の見事な作詞である。
「笛の音に、心乱れて投げる糸」ご視聴ください(尺八:櫻井正隆)



 さて、
星野先生はご当地ソング(富山県高岡市)で「家持」と「遊行婦女土師(うかれめはにし)」の関係を述べている。

♪身を焼く恋を包むよに 日暮れて灯る赤い灯よ 今宵のお前 遊行婦女土師 家持なのね 今宵のあなた 雨々 言霊(ことだま)の 雨 雨 銀の雨 濡れて高岡 スパシーヴァ高岡♪
 この歌詞では「家持」と「遊行婦女土師」の関係は恋人同志である。ちなみに「スパシーヴァ」とはロシア語の「こんにちは」である。(スパシーヴァ高岡の全歌詞)へ

 歌詞中の言霊(ことだまについては「たまさかとたまゆら」の中程へ  TOP


塩屋岬灯台と歌碑

星野哲郎氏と船村徹氏

「紅い裳裾(蹴出し)」
じょんから女節
(長山洋子さん)
)

「塩屋岬と豊間海岸」(新訂旅人歴史)
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