「乱交の歌祭り・・・万葉集より」

嬥(かがひ)」は男女が定めた日に集まり求愛する行事である。「嬥(かがひ)」は「嗅ぐ会い」に由来すると言う。
筑波の嶺に登り(かがひ)()る日に作った歌と短歌

登筑波嶺為嬥歌会日作歌一首并短歌(漢文)

(前略)(あども)ひて 娘子(をとめ)壮士(をとこ)の ()(つど)ひ かがふ(かがひ)に 人妻(ひとづま)に ()(まじ)わらむ ()(つま)に (ひと)(こと)()へ この(やま)を 牛掃(うしはく)(かみ)の (むかし)より (いさ)めぬ(こと)ぞ 今日(けふ)のみは めぐしもな()そ (こと)(とが)むな(後略)
 『誘いあって娘も男も(筑波山で)集い、嬥(かがひ)をしようじゃないか。私も人の妻と交わろう、私の妻に人も言い寄れ、昔から牛掃くの神(ウシハクノカミ)は交わるのを禁じてはいない、今日のみは愛(いつくしみ)合おうぞ、咎(とが)めてはならんぞ。』
鷲住 筑波乃山之 裳羽服津乃 其津乃上尓 率而 未通女壮士之 往集 加賀布嬥歌尓 他妻尓 吾毛交牟 吾妻尓 他毛言問 此山乎 牛掃神之 従来 不禁行事叙 今日耳者 目串毛勿見 言毛咎莫 嬥歌者東俗語曰賀我比(万葉仮名)(巻九 一七五九)
 次は反歌(短歌)
(ひこ)(かみ)に (くも)()(のぼ)り 時雨(しぐれ)()り ()(とお)るとも (あれ)(かえ)らめや
男神尓 雲立登 斯具礼零 沾通友 吾将反哉(万葉仮名)(巻九 一七六0)

右件歌者 高橋虫麻呂歌集中出(漢文)
 『男神(男体山)に雲が立ち登り、時雨が降り、びしょ濡れになっても私は帰るものか。』今日は年に一度の嬥(かがひ)の日だ。(歌は高橋虫麻呂の歌集の中に出ている)
 この「嬥(かがひ)」は茨城県の筑波山の麓の話である。また、能登半島(石川県)に「くじり祭り」と呼ばれる祭礼がある。昔から九月一日にあり、八朔祭(はっさくさい)とも呼ばれたが、今は八月十二日と十三日に行われる。昔は祭りの夜、男女が鎮守の森に集まり「かがひ」をしていた。未婚も既婚も老若も問わない。つまり人妻に吾も交わらむ、吾が妻に人も言問へである。

 「くじり」の由来は「富木(とぎ)八幡神社(石川県富来町)の御神体」が「イワブネ」で、昔、対岸の大陸から船が漂着し、里人が浜に行くと、見知らぬ若い女が「イワブネ」というモノを持っていて、里人が奪い取ろうとするがどうしても放さない。よほど大事なモノらしい。そこで、思案して、若い女の「べべせ」をくじったところ、ようように放した。と言う謂れである。(富木八幡神社の宮司さんの話では、若い女は漂着した難民、つまり、ボートピープルの女であったらしい)これは万葉集の「浦島の子(浦島太郎)」と逆、つまり「男が助けられたのと、女が助けられた」の違いであるが、船の遭難ということでは同じである。
 この「くじり祭り」に山車を引く。かけ声は「べべせ!べべせ!」である。夜の鎮守の森でも、昔々は「くじり」と「べべせ」であったそうである。ちなみに御神体の「イワブネ」は「石を彫った船(岩船)」である。古来より能登半島へ渡来人の渡航があった。多くは中国大陸の東北部の「渤海」や「粛慎」と呼ばれた国々からである。勿論、朝鮮半島の「百済」、「新羅」、「高句麗」などからも渡来した。また、二十六代天皇の「継体天皇」は、福井県の三国町の出自で渡来人、または、その末裔と見なされている。(継体天皇と越前の国)へ  富木八幡神社八朔祭(くじり祭り)
 また、羽咋市(はくいし)の「気多(ケタ)神社」は渡来人の由来である。「ケタ」とは渡来の神の名前で「ケタ」の神を祭らう一族である。昭和天皇は「気多神社」へ行幸され、我々一般人が参拝できない奥の御社へも行幸された。天皇家と御関係があるということらしい。ちなみに、この「奥の御社」は環状列石と聞く。

 また「嬥(かがひ)」は、渡来人と日本人のてっとり早い国際交流(融和)とも言える。異民族の争いや戦(いくさ)を避けるための先人の知恵であったろうと思う。能登半島を始め、日本海沿岸と朝鮮半島、中国大陸、ロシアとは、現在「環日本海交流」と称される国際交流が盛んになりつつあるが、その元は「嬥(かがひ)」や「浦島の子(浦島太郎)」などの古代の交流にもある。

 ところで、右上写真の環状列石の一例を見ると、中心に男根が起立して周囲は女陰であると思える。ここに男女が集まり「嬥(かがひ)」をしたと言われる。
 そう言えば、金沢でこんな話を聞いた。能登半島からトラックで材木を運ぶ仕事をしていて、通りすがりの女性に頼まれ、トラックに乗せてあげたところ「お礼をするものが何もないのよ。」と言われた。とのことであった。「能登はやさしや人殺し」(地元の言葉)(完)

(参考)
 「歌垣」は、その後の「歌合せ」、「連歌」に影響を及ぼしたとされている。歌垣は現存し、沖縄の「毛遊び(もうあしび)」に歌垣の要素が強く認められるほか、福島県会津地方の「ウタゲイ」や秋田県仙北地方の「掛唄」にも、歌垣が伺い知れる。歌垣と同様の風習は、中国南部からインドシナ半島、フィリピン、インドネシアにも存在する。このことから、古代日本の文化は、この点に於いて、東南アジアから中国南部にかけての地域と一体の文化圏を築いていたという見方もある。(夜這い

 また、「金山神社(川崎市)」の「かなまら祭り」は鍛冶屋(製鉄業)が使う「鞴(ふいご)」のピストン運動が男女の性交を連想させることなどから、性神としても信仰されている。御神体は金属製の男根であり「かなまら様(金魔羅様)」とも呼ばれている。(祭礼は4月1日)
 さア、男も女も「東京音頭」を歌って踊ろうよ!『♪おとっちゃんモおっかちゃんもゲンキ出せゲンキ出せ!』東京音頭
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環状列石の一例
縄文大湯遺跡

マラちゃんら川崎市)
万葉ジョークの会々員

金山神社(川崎市)

金山神社のかなまら祭り(川崎市)

逆さ地図(日本海が湖のように見える)
(富山県提供)
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